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 vol.22

買い付けで渡米するたびにいろんな人と様々な出会いをする。
行く度にお世話になる人、顔見知りになったお店屋さんのお姉さん、
そこに行くと、必ず待っている
おなじみの顔がある。
逆に、たまたま居合わせた人たち、例えば、飛行機で隣になった人、
ス−パ−マ−ケットで同じ列に並んで、レジ待ちしていた人・・・とか。
直接会話をしたわけでもなく、もう2度と出逢えなそうな人たち
そんな、一度きりの短時間の出会いの中でも、やたらとインパクトがあり、
忘れたくても忘れられない、旅の土産話にひと花咲かせてくれる人たちもいる。

そんな人たちを「DAWA日記」では、
【旅ネタな人たち】と命名した!
 ずっと前のことだけど、あるモ−テルに泊まった何日か目、ベッドの下にピスタッチチオのカラが落ちているのに気が付いた。
 私たちは、この部屋でピスタッチオは食べていない。だとすると、前に泊まった人が落としていったに違いない。・・・にしても、私たちがここに泊まって何日か経っている。その間、一度も掃除機をかけてくれてないのだろうか・・・?結局、次の日もその次の日も私たちがいるあいだ中、ピスタッチオのカラはビクともしなかった。
 そして、この間の2月。先のモ−テルとは別のところだが、同じような事があった。
 今回は、チェックインしてすぐに、またもやベッドの下にある物が落ちていのに気が付いた。今回はピンク色のキャンディだ。ベッドの下といっても、中央の下とかだったら、わざわざ腰や目線を下げて見なければならないけど、私が見つけたのは、ベッドの足と足のあいだで、普通にしてても目に止まる所に落ちているのだ。この部屋には、3日間お世話になるのだが、私はこのピンクがいつ片づけられるかと、行く末を案じ、自分では決して拾おうとしなかった。ちょっとした掃除のおばさんとの根比べである。
 次の日の夕方、部屋に戻ると、きれいに部屋が片づいていた。気になるピンクは・・・。相変わらず、ビクともしないでそこにいた。
 さらに次の日。この日はこのモ−テルでの最後の夜だ。しかしこの日、我々は珍しく時間を持て余し、3時にモ−テルに戻ってきてしまった。「ちょっと早いけど、掃除終わってるよな〜」と恐る恐るドアを開けると、朝出かけたときのまんまで、掃除がされてない。すぐにフロントに行き、掃除してくれるようにたのんだ。その間、隣接するカフェで1時間くらい時間をつぶした。
 もういいかな〜、と思い部屋へ戻ると、がっかり、そのまんま。別にシ−ツもタオルも自分が使った物だから無理にかえてもらうこともないか〜と、掃除のことなんかどうでも良くなり諦めた。30分くらいTVを見ながらゴロゴロしてたら、ドンドンドンと荒々しくドアをノックする音がした。ドアを開けるとそこにはナバホらしい2人の無愛想な掃除のおばちゃんがいた。今から部屋の掃除をするのだという。ジャマにならないように私たちは部屋の隅でその一部始終をながめていた。手慣れた様子で、1人のおばさんは洗面台・バス・トイレ、もう1人はゴミ箱の処理や備品の整理整頓。そして、それぞれの仕事が終わると2人でベッドメイキングを始めた。「ほぉ〜」とうなずきたくなるような手さばきであっという間にベッドはきれいに仕上がった。そして、2人はそれぞれの掃除用具を持って、さっさと部屋を出ていった。部屋は見事にきれいになった。
  ・・・が、なにか変だ。さっきのおばちゃんたち豪快にベッドの毛布を床に投げ置き、シ−ツをきれいに張り替えていた。でも、シ−ツって新しいのと交換してないぞ。それに床だって掃除機掛けてなかったぞ。そんなところに、毛布なんか置きやがって。そして・・・・案の定、ピンクは定位置にポツンといた。
 翌朝、部屋を去るとき、ナゼかピンクに愛着が湧き、私はピンクをそのままベッドの下に置いたままにしてきた。「もし今度、この部屋に泊まることができたら、また会おう。」そう思えた小さな出会いだった。